現代美術作家 三澤 亮介
「今と昔、そして未来」を自由に行き来きする。
Q1:三澤さんが創作を続ける原動力は何ですか?
心の底から思うのは、僕がこの世界に「希望を持ちたい」という生きるためのエネルギーそのものを作品に求めているんです。
だから、自分の作品を見て生きる希望を持ちたいし、エネルギーを感じたい。そういう意味では究極的に自己治癒の意味合いが高いです。その上で、その作品を同じく現代を生きている方々にも共感してもらえたり喜んでもらえると、自分が存在している意味を感じるしとても幸せです。その循環な気がします。
Q2:三澤さんの作品にはどんな「今」が刻まれていますか?
僕の場合は、作品の中で「今と昔、そして未来」を自由に行き来きする感覚なので、ある意味それがこの現代であり「今」だと思います。いろんな時間やタイミング、時間軸がごった煮になっている感じです。ある種、リアルタイム性の意味合いや独自性がAIの台頭によって希薄化したからこそ、どのようにこの世界と「今」を語るかが現代の作家に課せられた使命とも言えます。そこに向き合う姿勢やスタンスは、崩したくないですし、繰り返しになりますが僕自身はそれらを自分の手法の工程に丸ごと取り込むことで、自身の立ち位置を明確にしたいという思いがあります。
Q3:表現の限界を感じた瞬間、それをどう乗り越えてきましたか?
少しだけマッチョな発言になるのですが、おそらくそれはそこに賭けている時間やひたむきさ、もっと言えば作品の背景への情報収集、技術の部分の研鑽などの不足なのかなと思います。。限界や努力って言葉はきちんと集中して向き合っていると、その解釈にならないのではないかと思ってしまうんです。自分の表現活動をしている時間が何よりも好きだから、それをよくするために、文献や画集や論文から必要な情報を集めたり、信頼できるディレクターやキュレーターにフィードバックを求めたり、コレクターと会話してみたり、作家同士で話してみたり、それを踏まえて自分の作品に立ち返ってひたすらやり込む。繰り返す、みたいなことを続けていればそのうち形になってきます。僕も最近のJR東日本の新宿駅でのライブペイントでの作品は構想やスタイルは3年間毎日朝から晩まで描き続けて、研究していた時のシリーズです。そのシリーズはその時は一枚も売れなかったけど、今回作った時は150枚の結合キャンバスは並びが出てすぐに完パケしたり、、そういうタイミングのずれというか遅れて結果がやってくるみたいなこともあるので、長くなりましたが試行錯誤しながら進み続けるしかないです。。
Q4:作品を生み出す上で、最も予測不能な瞬間はどこにありますか?
重なる瞬間です。それは絵の具でもデジタルソフト上でも同じです。
例えていうなら僕というミキサーの中に入れる素材が日々微妙に変われば同じジュースを同じレシピで提供していても微妙に風合いは異なりますよね。作品もそれと同じでほんの少しの日々の中での組み合わせや時間が変わるだけでもニュアンスは変わります。それはコントロールしきれないので、一番予測不可能な気がしています。
Q5:世の中にまだ認識されていない「美」や「価値観」があるとしたら、それは何ですか?
この世に存在する一人一人の「自己への認識」だと思います。それはひいてはこの世界の美しさで、それは変わらないものです。
なので、ずっとそこにあるけど心の持ちようで見えたり認識できなかったりする訳です。
僕は誰かがそれに気づけるきっかけになるための作品作りを、人生を懸けてしているのです。
Q6:100年後、三澤さんの作品はどんな風に語られていてほしいですか?
地球がどうなっているか分からないですが、今よりも厳しい状況になっていて人々が苦しければ僕の作品を見て救いになったり希望を持てる人がいてくれたら嬉しい。けど世界がより良くなってみんながそういう作品もあったよね。という風に今の時代には必要がない価値観だね、といった具合に完全に過去になっていたら、それはそれでとても嬉しいです。望む世界なので。